2021年2月15日(第5回)

今日は献血に行った時の話を書く。Twitterでも同じ話はしたが、もう少し詳しい話をしたくなった。
20歳になったことだし、近所の献血ルームに足を運んだ。予約せず行ったので待ち時間も長かろうと本を持って行ったが、事前の検査などで頻繁に呼び出される。待ち時間は総合するとそれなりにあったのだろうが、集中して読書できるほどの時間はなかった。
持って行ったのはトーベヤンソンの短編集『黒と白』だった。ムーミンシリーズで有名な著者の中では異質な、ダークでディープな作品集、というような説明が裏表紙にあったが、登場人物が人間というだけで雰囲気はムーミンシリーズとさほど変わらなかった気もする。ムーミン谷の住人はわりと冷たかったり皮肉屋だったりする。
行く前、母親に「血管細そう」と言われ、何を根拠にと思っていたが本当に細かったらしく、血管を浮かせるためのチューブを二度巻き直された。さらに血管が浮くよう拳を強く握ってくださいと言われ、学生時代の握力測定以来のいきおいで強く握り拳をかためた。よく漫画などに強く握った拳に爪が食い込むという描写が出てくるが、そこまでやるには相当強くやらなければならず、またそれなりの握力も必要だろう。少なくとも私の手のひらに爪は食い込まなかった。
血を抜く部屋には十数台の機械と美容室で洗髪される際に使うようなベッドがあり、そこにたくさんの人が横たわっていた。血を抜かれている最中に気分が悪くならないように下半身を動かす体操というものがあり、手渡されたプリントを元にみようみまねでやっていたら内腿がつった。
採血中、腕に刺される針がこちらに見えないようかぶせてくれていた布が一瞬取れた。注射針より太いものが腕に突き刺さっている光景はさすがに少し肝が冷えた。反対に、パックいっぱいに満たされた自分の血液には特になんの感想も出てこなかった。腕は自分のもの、領域だという感覚が強いから針が刺さってなおかつ痛みはないという異様な事態に反射的に恐怖を覚えるが、血液はそうではないから怖くないのかもしれない。
献血ルームではお菓子や飲み物が無料で提供されている。面白かったのは飲み物の自販機だ。ボタンに料金表示がなく、押せば即座に飲み物が出てくる。不思議な感覚を覚えた。見た目は普通の自販機なのに、「金を払って商品を買う」という最も重要な部分だけが省かれている。都合の良い夢を見ているようだ。献血のあとは水分補給が大事だと念を押されたので遠慮なく3杯ほど飲んだ。
まだ針の痕はわずかに残っている。あと100日もすればすっかり消えるだろう。その頃にはまた献血に行くつもりだ。
今日はこれで終わり。初めて1,000字を超えた。
最近絵の練習も始めてみようかと思っている。これも練習の成果物をフリートに載せようか。絵と文章では勝手が違うのでこちらはどこまで続くか分からないが、負担にならない程度にやれたらいい。